結核:流行の予防について

人気お笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさんが肺結核で入院したことが話題になっていますので、結核の流行予防について簡単に説明したいと思います。
結核はうつる病気ですが、結核患者さんの全てが結核をうつすわけではありません。結核をうつすのは、排菌している(痰の中に結核菌がいる)患者さんだけで、排菌していない(痰の中に結核菌がいない)患者さんには感染性はありません。治療をはじめると速やかに排菌はなくなりますし、排菌する前にみつけて治療すれば人にうつすことはありません。ですから、結核の流行を予防するには、きちんと治療して排菌している患者さんをなくすことと、結核の患者さんに接触した方の検査を行い、結核が発病したとしても早期発見して排菌する前に治療してしまうことが重要です。早期に発見され排菌していなければ、入院する必要もなく、薬を飲むだけで治りますので患者さんの負担も少なくて済みます。
現在の日本では、このような予防策がうまくいっているので、結核の患者さんが散発的に発生することはあっても、インフルエンザのように流行することはめったにありません。これは、全国の保健所で、結核の患者さんがきちんと治療され治癒しているか、また、感染した可能性のある人が結核を発症していないかを数年間にわたって追跡調査するという地道な努力がなされているからです。
このような予防策や治療薬の進歩により、50年前と比べると結核は激減しています。しかし、それでも現在の結核の罹患率は人口10万人あたり19.8人ですから、決して珍しい病気という訳ではありません。また、発病しても咳が続く程度の比較的軽い症状でゆっくり進行することが多いので発見が遅れることもあります。咳が長引く場合は、軽く考えないで、呼吸器科に相談いただければと思います。