喫煙と疾病 —- たばこを吸っている方へ

☆たばこは、いろいろな病気を引き起こします。
たばこは、肺癌をはじめとする悪性腫瘍、肺気腫をはじめとする呼吸器疾患、心筋梗塞などの循環器疾患の危険因子となり、また、妊娠中の喫煙は流産などの危険を高め母子健康に悪影響を与えます。英国で約3万人のお医者さんを対象に50年間にわたって調査が行われ、たばこを吸う方は吸わない方に比べて10年早く死亡するという結果がでています。

☆たばこの煙には発癌物質が含まれ、いろいろな癌の原因になります。
肺癌で死亡する危険が喫煙者は非喫煙者に比べて男性で4倍から22倍、女性で2倍から12倍高いと言われています。喫煙者は、肺癌以外に食道癌、喉頭癌、肝臓癌、膵臓癌、胃癌、腎癌などになる危険も高まります。これは、たばこの煙に含まれる発癌物質が遺伝子に傷を入れ細胞を癌化させるためです。すなわち、たばこを吸うたびに、癌になるくじを引いているようなものです。

☆息切れを感じたら、肺気腫のはじまりかもしれません。
肺気腫は、たばこの煙による刺激で気管支・肺に慢性の炎症がおき、徐々に肺が障害されていく病気です。階段や坂道を登るときの息切れが最初の症状ですが、進行すると酸素吸入が必要となります。肺気腫になりやすい人なりにくい人、個人差がありますが、基本的には煙草を吸われた分量に比例して病気が進行します。

☆たばこは、血管を収縮させ心筋梗塞の原因となります。
たばこには、血管を収縮させる作用があり、これが循環器疾患の原因となります。喫煙者では非喫煙者に比べ心筋梗塞、狭心症になる危険が2から4倍、末梢血管疾患になる危険が10倍高いといわれています。胃潰瘍、くも膜下出血、動脈瘤の危険も高くなります。糖尿病や高血圧などの血管の障害を伴う病気の患者さんの場合、これらの病気になる危険はさらに高まります。

☆周囲でたばこを吸われても健康を害します。
さらに、たばこは喫煙者だけが病気になるわけではありません。家庭や職場で喫煙者と一緒に生活している受動喫煙者も肺癌や心筋梗塞になる危険が2から3割増すといわれています。

☆いま禁煙すれば間に合います。
しかしながら、タバコを止めれば、早ければ早いほど良いのですが、これらの病気になる可能性は減ります。最初に述べた英国での調査では、40代前半までにたばこをやめた方は、死亡率がたばこを吸わない方と変わりませんし、50代以降でたばこをやめた方も吸い続けた方よりも死亡率が低下します。病気別にみても、50歳までに禁煙すれば、肺癌になる危険は半分になるとも言われていますし、肺気腫もその進行が遅くなり、心筋梗塞の危険も減ります。これらの病気は、発症してしまうと根本的な治療法がありません。ですから、発病する前にたばこを止めることが大事です。たばこは長い習慣で、これを止めることには大きな抵抗を感じられると思います。従って、禁煙をするためには、まず、たばこを止めることを決断することが大切です。たばこを止めようと決めても、なかなか止められない場合は、たばこを止めた時のいらいらを抑える薬があり、保険診療ができますので是非ご相談ください。